診断と治療の流れ
ステロイド薬は、抗炎症作用、免疫抑制作用をもつため、炎症性疾患、免疫系疾患、アレルギー性疾患、たとえば、膠原病、ネフローゼ、関節リウマチ、重い喘息、ひどいアレルギー症状など、多くの疾患に使われる薬です。
このステロイド薬の主な成分はグルココルチコイド(糖質コルチコイド)です。グルココルチコイドはインスリン拮抗ホルモンでもあり、肝臓での糖新生(蛋白質を糖に変換すること)を促したり、インスリンに対する感受性を低下させて末梢組織での糖利用を妨げる働きをもっています。すなわち、ステロイド薬は血糖値を上昇させる作用をもつので、高血糖をきたし糖尿病を悪化させるおそれがあります。
そのため、糖尿病のある人がステロイド薬を使用するときには、血糖値の上昇の可能性が高くなるので高血糖の是正に努めなければなりません。
ステロイド薬治療をはじめたら、開始時から尿糖、食後血糖値、HbA1c、グリコアルブミン(GA)、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)などの血糖変動指標を用いた定期的な検査を行います。
ステロイド薬による血糖値の上昇は、ステロイド薬による治療が終われば改善する場合が多いのですが、終了後も高血糖が持続する場合があります。
ですから、ステロイド薬を短期的に使用する場合でも、一時的な高血糖だからと油断しないことが大切です。特に、食事療法の徹底が重要となります。
また、長期のステロイド薬治療になったときには、骨粗しょう症による骨折の危険性がありますので、運動療法は、糖尿病治療の妨げにならない範囲内にとどめなければいけない状況になることも心にとどめておきましょう。
監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生