診断と治療の流れ
糖尿病は、インスリンの分泌能の低下やインスリン感受性低下(抵抗性増大)によって慢性の高血糖状態が起こる代謝性疾患です。
そのため、治療はまず高血糖状態を是正するために、食事療法・運動療法を基本に、ときに薬物療法を加えて、血糖値を正常値により近づけて良好な血糖コントロールを維持することから始めます。
一般的に、血糖コントロールの最も重要な指標として、慢性の高血糖状態を反映した数値であるHbA1cが用いられています。
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2018-2019, 文光堂, 29, 2018
その他にもグリコアルブミンや1,5AGなど指標を用いて、厳格な血糖コントロールを維持していきます。しかし、なぜこんなにも厳格な血糖コントロールが必要なのでしょうか?
高血糖状態を放置し続けると、起こるさまざまな重大な合併症を防ぐためです。すなわち糖尿病治療の目的は、この糖尿病合併症をいかに防ぐかということにあります。
糖尿病はなかなか自覚症状が出ないため、合併症が起こってからはじめて糖尿病の怖さ、血糖コントロールの重要性に気づく場合が多いようです。血糖コントロールが不安定なまま、何の対策もとらずに日々を過ごしていると、じきに糖尿病合併症を発症することになります。
糖尿病合併症は、高度のインスリン作用不足により起こる急性合併症と長期間にわたる高血糖状態によって引き起こされる慢性合併症があります。
これらは、患者さんのQOLや生命予後を著しく悪化させます。そして、糖尿病合併症が発症または進展してしまうと、今までよりも血糖コントロールのための自己管理も大変になってしまいます。さらに、身体的な負担だけでなく経済的な負担も大きく違ってくるのです。
糖尿病の治療は、糖尿病合併症の有無により、身体的な負担のみならず、経済的にも大きく異なります。
同じカテゴリーのページ
監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生