インスリン注射による治療
糖尿病患者さんの不足しているインスリンを、体の外から注射で補給して血糖値を下げます。1型の糖尿病がある人には必ず必要なものです。
インスリン製剤は、作用する時間によって次の5つに分けられます。同じ分類内でも投与方法や作用時間などに少しずつ違いがありますので、患者さんの糖尿病の状態や、合併症の有無、ライフスタイルを十分に見極めたうえで、患者さんにいちばんあったインスリン製剤が処方されます。
※イメージ図
※配合溶解は省略しています
河盛 隆造 監修:目からウロコの糖尿病治療!!, サノフィ株式会社, 12, 2016
インスリンは、指示された時間に自己注射します。注射する部位は、腹壁(お腹)、腕、太ももなどです。
注射部位は図に示した箇所ですが、自己注射では腹壁(お腹)や太ももが注射しやすいと思います。ただし、注射部位によってインスリンの吸収に若干差がありますから、主治医や薬剤師、看護師に相談しましょう。
注射は同じ注射部位内で、毎回2~3cmくらいずつずらしていきます(これをローテーションといいます) が、原則として、(今回はお腹で次は太もも、明日は腕のように)注射部位を毎回変えることはしません。
注射針は採血用の針と比較してとても細いものを使います。長さはいくつか種類がありますので、皮下組織に届く長さのものを選びます。とてもやせていて、針が筋肉にとどいてしまう場合には、注射部位をつまんだり、針を少し斜めに射すこともありますが、通常は、最も短い4mmの針を使って皮膚に対してまっすぐに根元まで刺します。太っている人には、逆に適切な場所にとどかない場合がありますので、8mmの針がよいでしょう。
インスリン製剤の選択と同様に、1人ひとりの体にあった自己注射の方法も主治医・看護師が支援してくれますので、不安なことがあれば遠慮なく相談しましょう。
インスリン注射は、面倒で難しいと思っていませんか?
薬や注射器がどんどん進歩して、とても簡単に注射できるようになっています。
「インスリンペン型注入器」というとても便利な注射器が開発されて、手軽にインスリン注射ができます。
現在、インスリン製剤には、使い捨てタイプのキット製剤と、インスリンペン型注入器にカートリッジ製剤を装着して使用するタイプがあります1)。
注射をする前に、次のことをしっかり覚えておくようにしましょう。
注射の仕方は、自己注射をはじめる前に病院やクリニックで支援を受けます。注射の仕方がわからなくなった場合は、お使いのインスリン製剤の製造 ・販売元であるメーカーが設けている「患者さんサポートダイアル」を利用することもできます。
受付時間や曜日は各メーカーによって異なりますので、自分が今使っているインスリン製剤の名前に加えて、サポートダイアルの受け付け体制などもいつでもわかるようにしておくと便利です。
簡易血糖測定器を用いれば、患者さん自身で自分の血糖値を簡単に測定できます。血糖自己測定は、血糖の自己管理に活用できますし、インスリン療法を行っている患者さんであれば、血糖値にあわせたインスリン量の調整ができます。
監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生