インスリン療法へ不安をお持ちの方へ

子どもとインスリン療法

今までは、子どもの糖尿病はそのほとんどが1型糖尿病であるとされていましたが、近年では、ライフスタイルの欧米化などによる小児肥満の増加に伴って2型糖尿病が増えており、インスリン療法は1型糖尿病だけでなく2型糖尿病にも積極的に用いられる治療方法となっています。
1型、2型ともに治療の基本は食事療法・運動療法になりますが、それではよくならない2型糖尿病、インスリンが絶対的に必要な1型糖尿病ではインスリン療法を行います。インスリン療法は足りない分のインスリンを注射によって補充する治療です。ですから、自分で注射ができるようにならないといけません。きっと、はじめは注射がこわい、イヤだなと思う気持ちがとても大きいと思います。
でも、どうしてインスリンを注射するのか理由がわかれば、その必要性もきっとみえてくるはずです。どんなときに、どうしてインスリン療法が必要なのか、気をつけることなどを知っておくことからまずはじめましょう。
特に子どもの糖尿病では、成長して自己管理ができるようになるまでは、主に治療は保護者や家族によって行われ、家族や身近な人の理解と協力、学校や広くは社会環境の理解と協力なくしてはうまくいかないこともありますので、患者さん本人だけでなく、みんなで糖尿病を正しく知ることがとても大切です。

田嶼 尚子:よくわかる最新医学 小児糖尿病 ヤング糖尿病 主婦の友社, 18・125, 2009

2型糖尿病とインスリンによる治療

2型糖尿病では、糖尿病の治療はあくまで食事療法・運動療法が基本です。
一方で、一部の2型糖尿病では薬物治療が必要になる場合もあり、経口血糖降下薬で血糖管理が上手くいかないときには積極的なインスリン療法への切り替えが行われています。

田嶼 尚子:よくわかる最新医学 小児糖尿病 ヤング糖尿病 主婦の友社, 66, 2009


1型糖尿病とインスリンによる治療

1型糖尿病では、体の中のインスリンをつくる機能(インスリン分泌能)が低下または全く機能していないため、インスリンの絶対量が足りません。そこで体の外からインスリンの補給が必須になります。ですから、インスリン療法とはずっと付き合っていかなければなりません。
子どもは何においても、健全な肉体的・精神的成長が大切です。子どもの1型糖尿病は、糖尿病でない子どもと同じ発育とQOLを確保して、できるだけ周囲と同じ社会生活を送りながらインスリン療法を継続して糖尿病合併症の発症を防ぐことを目指します。

田嶼 尚子:よくわかる最新医学 小児糖尿病 ヤング糖尿病 主婦の友社, 26-29・60, 2009


できること。気をつけること、知っておきたいこと

  1. 成長期にある子どもでは、成人に比べて毎日の食事量と運動量は一定にはなりにくいので血糖値が変動しやすくなります。そのためその日の予定にあわせてインスリンの投与量を調節していきます。
  2. インスリン療法に限りませんが糖尿病の薬物治療は低血糖と背中合わせでもあります。低血糖についての対処法はきちんとマスターしておくようにしましょう。
    自分では対処できない意識障害や昏睡などの重症低血糖に陥ることもあるかもしれません。すぐに対応してもらえるよう、家族や身近な人にも低血糖について知っておいてもらうようにしましょう。
  3. 食事の量や回数が少ない乳幼児や学童期の子どもの1型糖尿病では、より生理的なインスリン分泌に近づけられるCSⅡの活用もよいとされています。
  4. 長時間高血糖状態が続くと糖尿病合併症の発生のリスクが高くなります。食事療法・運動療法、インスリン療法を続けて良好な血糖管理を持続し、将来の糖尿病合併症の予防に努めることが、これから長い時間を生きる子どもの糖尿病ではQOLを維持するためにも大変重要になります。

田嶼 尚子:よくわかる最新医学 小児糖尿病 ヤング糖尿病 主婦の友社, 60-69・78-85・122-126, 2009

監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生