食事・運動療法
運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療の基本です。
運動療法がなぜよいのかというと、2型糖尿病のおもな原因は、肥満、過食、運動不足によるものだからです。運動によりエネルギーを消費して、肥満を解消 ・抑制します。さらに運動を毎日続けていると筋肉の活動量が上がることで、悪かったインスリンの働きも改善します。さらに食後1時間頃に運動をすると、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促されて血糖値が下がるという効果もあります。
1型糖尿病は、インスリンをつくりだす細胞が壊れてしまっているため、運動によるインスリンの機能自体の回復という治療としての効果は望めませんが、運動は筋力を高めたり、ストレス解消にも役立ちます。とくに子どもの場合は心身の健全な発達を助ける手段にもなります。とはいえ、1型糖尿病も2型糖尿病と同様に、運動することで外から補給しているインスリンの働きを高めることができますので、毎日運動することは大切です。
運動したからといって、食事療法は怠らないようにしましょう。血糖管理を良好に維持するにはどちらか一方が欠けてもうまくいきません。
運動の種類には、有酸素運動とレジスタンス運動の2つがあります。
糖尿病のある人には、ダンベルなどを使って筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動より、歩行やジョギング、水泳などの全身運動にあたる有酸素運動のほうが適しています。有酸素運動を継続して行うことで、インスリンの働きがよくなるからです。
歩行運動なら、1日約1万歩、消費エネルギーに換算するとほぼ160~240kcalの消費が望ましいとされています。
歩行運動の目安は1回につき15~30分間、1日2回行います。毎日行わなくともかまいません。1週間に少なくとも3日以上の頻度での歩行運動が望ましいとされています。
歩行運動は、いつでも、どこでも、ひとりでもできますし、体力や年齢にあわせて歩き方やスピードを変えることができます。これなら、まとまった運動時間がなかなかとれない人でも、歩行をともなう通勤、通学、買い物などで、実践できます。
宮崎久義、豊永哲至 編:わかりやすい糖尿病テキスト 第5版 じほう ,51,2018
しかし、歩行運動を始め、間違ったやり方で運動を行うと、糖尿病を悪化させたり、心筋梗塞の発症などの思いがけない事故を引き起こすことがあります。また、なかには運動療法の禁止あるいは制限したほうがよい人もいます。
運動療法をはじめる前に、必ず医師の支援を受け、運動するときは運動療法の原則を守りましょう。
監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生