経口血糖降下薬による治療

ビグアナイド薬

どんな働きをするの?

肝臓では常にブドウ糖が産生され、血液中に放出されています。この肝臓での糖の産生にはグリコーゲンの「分解」と「糖新生」という2つの過程があります。糖新生とは、乳酸やアミノ酸などのブドウ糖以外の物質からブドウ糖を産生する過程のことをいい、インスリンはこの糖新生が過剰にならないように調整しています。2型糖尿病ではインスリン分泌能の低下やインスリン抵抗性によって、糖新生が過剰になってしまいます。
ビグアナイド薬は、この肝臓で行われている過剰になった糖新生を抑えることで空腹時血糖を下げます。そのほかに、腸で行われるブドウ糖の吸収を抑えたり、骨格筋などのインスリン感受性を改善してブドウ糖の取り込みを増加させるなどの働きにより、間接的なインスリン抵抗性の改善効果を得ることができ、さらに食後高血糖の改善もするといわれています。


どんな人に用いられる?

肥満とインスリン抵抗性による高インスリン血症がみられる2型糖尿病への使用が最もよく、血糖管理改善での体重の増加がしにくいとされています。なお、肥満でない人に用いても血糖改善効果がみられることもあります。


この薬剤を使う際に気をつけること・知っておきたいこと

  1. ビグアナイド薬を使う際には、食事療法・運動療法がきちんとできていることが特に重要となります。
  2. SU薬やインスリン療法単独での治療で十分な血糖管理がみられない場合の併用薬としても用いられます。また逆に、SU薬やインスリン投与量の減量が可能となる場合があり、β細胞の負担を軽減したり、高インスリン血症改善につながることもあります。
  3. ビグアナイド薬にはインスリンの分泌を刺激する作用はないため、インスリンの分泌量は増加しません。
  4. インスリンの分泌を刺激する作用がないため、ビグアナイド薬のみの服薬では低血糖の起こる危険は低くなっていますが、アルコール摂取、その他の薬剤やインスリン療法と併用して場合には注意が必要です。まれではありますが、血液中に乳酸がたまって意識障害に陥る乳酸アシドーシスという重篤な副作用があります。
  5. 心臓・肝臓・腎臓・肺の機能障害、循環障害、大量のアルコールを飲む、栄養不良、下垂体・副腎機能不全、高齢の方、インスリン療法の絶対適応のある方には使用できません。
  6. 特に、吐き気・食欲不振・下痢などの消化器症状、強い倦怠感や筋肉痛などがみられやすいので、これらの症状が起こった場合は主治医に知らせるようにしてください。

血糖管理が上手くいかないとき

  • 食事療法・運動療法がきちんとできていますか?
    →管理不良の一番の原因です。再度、自分のライフスタイルを振り返ってみましょう。
  • インスリンの分泌量の低下が起きている可能性があります。
    →インスリンの分泌を刺激する作用のある他の薬剤の併用、併用薬の変更やインスリン療法を検討します。
  • 糖尿病以外の病気が発症または悪化している可能性が考えられますので、定期的なチェックを受けるようにしましょう。
<各薬剤共通の注意点>

血糖管理がよくなったからといって自己判断で服薬を中止してしまうことは決してしないでください。血糖管理が順調なのは、食事療法・運動療法と、服薬している薬が上手く機能しているからです。薬の量を減らす、増やす、止めるなどの判断は、医師が患者さんの状態にあわせてその都度適切な処方をしていますので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。
もし、今、服薬している薬について少しでも不安や疑問があれば、遠慮せずに主治医または薬剤師に相談するようにしましょう。安心して、信頼して薬が飲めることも、治療の継続と成功への大切な要素であることを知っておきましょう。

監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生