糖尿病を知ろう
クルマがガソリンを燃料にして動くように、わたしたちの体は血液中のブドウ糖を燃料にして動いています。ブドウ糖は、ごはんやパンなどの炭水化物、イモ類やお菓子などの糖分に含まれています。ふだんの食事からとったブドウ糖が血液中に溶け込んで全身に運ばれることでエネルギーとして働き、私たちの脳や筋肉、内臓が動いて生命が維持される仕組みになっているのです。
この血液中のブドウ糖は、「血糖」と呼ばれています。血糖の量は食事をすると増え、1~2時間をピークに減っていきます。
血糖の量は、食事のほか、さまざまな原因によって変動しますが、健康な人の体内では変動する血糖が上手にコントロールされ、いつも一定の幅の中で保たれています。なぜでしょう。そのひみつはインスリンというホルモンにあります。
インスリンは、すい臓のランゲルハンス島という組織にあるβ細胞でつくられています。食事によって血糖値が上がる(血糖の量が増える)と、すい臓のβ細胞がこの動きをすばやくキャッチして、すぐにインスリンを分泌します。血糖が全身の臓器にとどくと、インスリンの働きによって臓器は血糖をとり込んでエネルギーとして利用したり、たくわえたり、さらにタンパク質の合成や細胞の増殖を促したりするのです。こうして、食後に増加した血糖はインスリンによって速やかに処理され一定量に保たれるのです。
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もし、インスリンの量が少なかったり、分泌されても上手に働くことができなくなると、血糖が一定の値を超えて高い状態が続きます(高血糖)。この状態が糖尿病なのです。
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現在、日本を含むアジアで糖尿病の患者さんが急速に増え、大きな問題となっています。
その原因は、食生活の欧米化にあるといわれています。欧米食は高カロリー食が多く、内臓脂肪が蓄積しやすいのです。内臓脂肪型肥満のうえに運動不足だと、必要なインスリンは通常の数倍にもなります。しかし、アジア人はもともとの体の仕組みとして、欧米人よりインスリンを分泌する量が少ないのです。つまり、アジア人は軽度の肥満でも糖尿病になりやすい民族なのです。
そのほか、ストレスや、運動不足も糖尿病と大きくかかわっていると考えられています。
監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生