インスリン注射による治療

インスリン注射について

糖尿病患者さんの不足しているインスリンを、体の外から注射で補給して血糖値を下げます。1型の糖尿病がある人には必ず必要なものです。

インスリン製剤は、作用する時間によって次の5つに分けられます。同じ分類内でも投与方法や作用時間などに少しずつ違いがありますので、患者さんの糖尿病の状態や、合併症の有無、ライフスタイルを十分に見極めたうえで、患者さんにいちばんあったインスリン製剤が処方されます。

どんな種類があるの?

1) 超速効型インスリン製剤

  • 超速効型インスリン製剤は食直前に自己注射します。
  • 注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は10~20分、インスリンの作用が持続する時間は3~5時間です。

2) 速効型インスリン製剤

  • 食前に自己注射します。
  • 注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は30分~1時間、インスリンの作用が持続する時間は5~8時間です。

3) 中間型インスリン製剤

  • 朝食前30分以内のものや、朝食直前のものがあり、これらはときに1日の投与回数を増やして自己注射することができます。
  • 注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は30分~3時間、インスリンの作用が持続する時間は18~24時間です。

4) 混合型インスリン製剤

  • 朝食直前のもの、朝食直前と夕食直前のもの、朝食前のものや、朝食前と夕食前30分以内に自己注射するものがあります。
  • 超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤を、いろいろな割合で混ぜてある製剤です。
  • 超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果がでますが、持続時間は中間型インスリンとほぼ同じです。

5) 配合溶解インスリン製剤

  • 食直前に1日1回または朝食直前と夕食直前の1日2回自己注射します。
  • 超速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤を混ぜてある製剤です。
  • 超速効型インスリン製剤と時効型溶解インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果がでますが、作用時間は持効型インスリンとほぼ同じです。

6) 持効型溶解インスリン製剤

  • 朝食前のもの、夕食前のもの、就寝前のもの、朝食前と夕食前のものや、朝食前と就寝前に自己注射するものがあります。
  • 注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は1~2時間、インスリンの作用が持続する時間はほぼ1日にわたります。
  • 1日中の血糖値を全体的に下げます。
インスリン製剤の種類と作用時間(作用イメージ)

※イメージ図

※配合溶解は省略しています
河盛 隆造 監修:目からウロコの糖尿病治療!!, サノフィ株式会社, 12, 2016

自己注射の仕方について

注射の仕方は?

インスリンは、指示された時間に自己注射します。注射する部位は、腹壁(お腹)、腕、太ももなどです。

インスリンの注射部位

注射部位は図に示した箇所ですが、自己注射では腹壁(お腹)や太ももが注射しやすいと思います。ただし、注射部位によってインスリンの吸収に若干差がありますから、主治医や薬剤師、看護師に相談しましょう。
注射は同じ注射部位内で、毎回2~3cmくらいずつずらしていきます(これをローテーションといいます) が、原則として、(今回はお腹で次は太もも、明日は腕のように)注射部位を毎回変えることはしません。

皮下注射の打ち方 説明図

注射針は採血用の針と比較してとても細いものを使います。長さはいくつか種類がありますので、皮下組織に届く長さのものを選びます。とてもやせていて、針が筋肉にとどいてしまう場合には、注射部位をつまんだり、針を少し斜めに射すこともありますが、通常は、最も短い4mmの針を使って皮膚に対してまっすぐに根元まで刺します。太っている人には、逆に適切な場所にとどかない場合がありますので、8mmの針がよいでしょう。

インスリン製剤の選択と同様に、1人ひとりの体にあった自己注射の方法も主治医・看護師が支援してくれますので、不安なことがあれば遠慮なく相談しましょう。

インスリン注射は、だれでも簡単にできます。

インスリン注射は、面倒で難しいと思っていませんか?
薬や注射器がどんどん進歩して、とても簡単に注射できるようになっています。

「インスリンペン型注入器」というとても便利な注射器が開発されて、手軽にインスリン注射ができます。
現在、インスリン製剤には、使い捨てタイプのキット製剤と、インスリンペン型注入器にカートリッジ製剤を装着して使用するタイプがあります1)

カートリッジ交換型インスリン注入器とカートリッジ 使い捨てタイプのインスリン注入器 イラスト

注射をする前に、次のことをしっかり覚えておくようにしましょう。

  1. 1日何回するのか
  2. いつ・どこに注射するのか

患者さんサポートダイアルを利用できます

注射の仕方は、自己注射をはじめる前に病院やクリニックで支援を受けます。注射の仕方がわからなくなった場合は、お使いのインスリン製剤の製造 ・販売元であるメーカーが設けている「患者さんサポートダイアル」を利用することもできます。

受付時間や曜日は各メーカーによって異なりますので、自分が今使っているインスリン製剤の名前に加えて、サポートダイアルの受け付け体制などもいつでもわかるようにしておくと便利です。

インスリン量の調節に血糖自己測定を活用

簡易血糖測定器を用いれば、患者さん自身で自分の血糖値を簡単に測定できます。血糖自己測定は、血糖の自己管理に活用できますし、インスリン療法を行っている患者さんであれば、血糖値にあわせたインスリン量の調整ができます。

監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生