インスリン療法へ不安をお持ちの方へ

始めようインスリン治療

インスリン治療の基本的な考え方

糖尿病がない人の血糖値は、少量ながら常に出されているインスリン(基礎分泌)と食事によって血糖値があがったときにすぐに出されるインスリン(追加分泌)によって、一定の範囲に保たれています(図)。

Riddle MC.:Diabetes Care, 13(6), 676-686,1990より作成

糖尿病のある人では、体内のインスリンの量が不足したり、インスリンの働きが悪くなったり、出るのが遅れたりして、血液中のブドウ糖(血糖)が多くなりすぎた状態(高血糖状態)となります。そのため、インスリン治療の基本は、糖尿病がない人の基礎分泌と追加分泌にできるだけ近づけて糖尿病がない人と変わらない血糖管理を保つことです。

インスリン治療への不安と期待

インスリン治療というと不安に感じられる方がいらっしゃることと思います。しかし患者さん300人を対象としたCANDO studyというアンケート調査によれば、「注射が怖い、痛い」と考えている方は全体の19.3%で、「毎日一生打ち続けることに対する不安」を感じている方は16.7%、「低血糖が心配」だと思われている方は9.0%と、実際はそれほど多くないことが示されています。
逆にインスリン治療に対する期待としては、同じ調査によれば、「合併症の防止」が88.4%、「厳格な血糖管理」が87.3%と、むしろ不安よりも期待が大きいことが示されています。

渥美 義仁:新薬と臨牀, 58(7), 1193-1205, 2009

インスリン治療後の気持ちの変化

CANDO studyではインスリン治療後の患者さんの気持ちの変化についても調査されており、「思ったより注射は難しくなかった」と答えた方が57.5%、「自分の治療に向き合っている気持である」が31.2%、とポジティブな意見が多くみられています。このようにインスリン治療は不安よりも、実際やってみてよかった、怖くなかったと感じられている患者さんが多くみられました。

インスリン導入後の変化および気持ちの変化

渥美 義仁:新薬と臨牀, 58(7), 1193-1205,2009

監修:東京医科大学 内科学第三講座 主任教授 小田原 雅人 先生