経口血糖降下薬による治療

子どもの糖尿病治療

子どもの糖尿病は1型糖尿病と思われがちですが、近年のライフスタイルの欧米化に伴い、子どもの2型糖尿病が増加しています。現在では日本人の小児糖尿病の約70%が肥満の2型糖尿病といわれています。

治療にかかわる特徴は?

自覚症状がないため気づかずに放置されていることが多く、学校の健康診断で尿糖が陽性として見つかったり、肥満の場合は肥満検診でみつかることがほとんどです。
また、子どもの2型糖尿病は自身が肥満であることのほかに、家族や血縁者に2型糖尿病の方がいることが多い(遺伝的な要因が強い)ことがわかっています。子どもの2型糖尿病では、肥満の子ども・肥満でない子どものどちらもインスリン分泌する働きはあるもの、インスリンの働きが悪い(インスリン抵抗性が強い)タイプの2型糖尿病の場合が多く、高インスリン血症、食後高血糖の状態にあります。


治療のポイントは?

  • 子どもの糖尿病の治療は、健康な子どもと同じ発育と生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)の確保が前提となります。
  • 本人・保護者や家族はもちろんのこと、学校の先生やまわりの友達にも、2型糖尿病の病気への理解と、きちんとした治療が必要であるという意識をもってもらうことが大切です。
  • 食事療法・運動療法をきちんと行って、ライフスタイルの改善を図れるかがとても重要になります。
  • 子どもの場合は成長過程にありますので、成長に必要なエネルギーが不足しないように配慮することも必要です。
    推定エネルギー必要量(kcal/日)

    厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準2015(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf)

  • 薬物治療を行ううえで、低血糖はつきものと考えておきましょう。
    低血糖の対処方法を心得ておけば怖いものではありません。また、日常生活では風邪をひいた、おなかをこわしたなど体調の悪い日(シックデイ)が一生ないわけにはいきません。毎日の体調管理は糖尿病でなくとももちろん大切ですが、シックデイの時は少量ずつこまめに水分補給をする、3~4時間ごとに血糖値や尿ケトン体の自己測定をして状態を調べるなどの対処を行いましょう。
    いずれにしてもシックデイの時は、かかりつけ医にすぐ連絡して指示を仰ぐようにしてください。

田嶼 尚子:よくわかる最新医学 小児糖尿病 ヤング糖尿病 主婦の友社, 60・82・86-87・96・112・122-124, 2009


子どもの薬物治療には何が使われている?

治療の基本は食事療法・運動療法ですので、薬物治療はあくまで血糖コントロールがうまくいかない場合などの補助的な役割とされますが、食事療法・運動療法のみで血糖コントロールの目標を達成できない場合は、積極的に薬物療法を考慮します。
子どもの2型糖尿病の治療薬は、子どもを対象とした試験は実施されていませんのでエビデンスに基づいた目標は設定されておらず、現時点では、経口血糖降下薬の選択において確立された基準はありません。

監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生