経口血糖降下薬による治療

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

どんな働きをするの?

インスリンの分泌する力が低下しているタイプの2型糖尿病では、糖分の摂取後すぐにインスリンを分泌して、血糖を速やかに低下させる働きが低下しているために、血糖の上昇とインスリン分泌のタイミングが合わないことがあります。 速効型インスリン分泌促進薬は、インスリン分泌のスピードを早めて、食後の血糖の上昇を抑える働きがあります。そのためインスリンをすばやく分泌させることで食後高血糖を改善することから、インスリン分泌パターンの改善薬ともいえます。食後のインスリン分泌量を増加させる作用はSU薬に比べて弱くなっています。


どんな人に用いられる?

インスリン非依存状態で、食事療法・運動療法を行っても十分に血糖が下がらず、食後高血糖がみられる軽症の2型糖尿病に、食後高血糖の改善を目的に用います。


この薬剤を使う際に気をつけること・知っておきたいこと

  1. 速効型インスリン分泌促進薬を使う際には、食事療法・運動療法がきちんとできていることが特に重要となります。
  2. 必ず毎食直前に服薬しましょう。服薬後、薬の効果がみられるのがたいへん速やかな薬剤のため、食前30分の服薬でも食事開始前に低血糖を起こすことがありますが、服薬時間をきちんと守っていればほとんどありません。
  3. SU薬を用いる前の状態で使う薬として位置付けられています。SU薬の服薬で効果がみられない場合には、糖尿病の状態が悪化していることが考えられるため、無効なことが多いとされます。
  4. SU薬との併用は認められていません。
  5. 速効型インスリン分泌促進薬はインスリンを分泌する働きに直接作用するため必ずしも低血糖が起きないとはいえませんが、低血糖について知り、また低血糖になったときの対処法を心得ておけば心配はありません。
  6. 肝機能や腎機能の悪化、インスリンを含むその他の血糖降下薬を併用している場合には、特に低血糖が起きやすくなりますので注意が必要です。

血糖管理が上手くいかないとき

  • 食事療法・運動療法がきちんとできていますか?
    →再度、自分のライフスタイルを振りかえってみましょう。
  • 服薬の時間帯や服薬量を間違えていませんか?
    →この薬は、毎食直前の服薬が必須です。
  • インスリン分泌する働きがほとんどない、全くない場合、SU薬をすでに服薬していて血糖管理が不良であった、などの場合は有効性はほとんど期待できませんので、そのほかの薬剤への変更を考慮します。
  • 他科や他院で副腎皮質ステロイド薬、チアジド系利尿薬などの血糖を降下させる作用を弱める薬を服薬している、またはサリチル酸製剤やβ遮断薬などの血糖を降下させる作用を強める薬を処方されていませんか?
    →何か服薬している薬があれば医師に伝えることが大切です。それぞれの薬の作用が影響し合って十分な効果が得られないことがあります。血糖を降下させる作用が弱まると血糖管理が困難になり、強まると低血糖が起きやすくなります。
  • 糖尿病以外の病気が発症または悪化している場合が考えられますので、定期的なチェックを受けるようにしましょう。
<各薬剤共通の注意点>

血糖管理がよくなったからといって自己判断で服薬を中止してしまうことは決してしないでください。血糖管理が順調なのは、食事療法・運動療法と、服薬している薬が上手く機能しているからです。薬の量を減らす、増やす、止めるなどの判断は、医師が患者さんの状態にあわせてその都度適切な処方をしていますので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。
もし、今、服薬している薬について少しでも不安や疑問があれば、遠慮せずに主治医または薬剤師に相談するようにしましょう。安心して、信頼して薬が飲めることも、治療の継続と成功への大切な要素であることを知っておきましょう。

監修:順天堂大学 名誉教授 河盛 隆造 先生