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糖尿病の人に出会ったらどうする?
災害時、私にできること
1995年1月、阪神・淡路大震災が発生し、多くの被災・被害を出しました。亡くなられた方や、大ケガに見舞われた方も多く、震災による外的・精神的被害は言葉では言い尽くせないほどのとても大きなものでした。
その状況下で、糖尿病患者さんも例外ではありませんでした。糖尿病患者さんは一見健康そうに見えるために、家族や糖尿病を知る人を除いて、ほとんどの人には危機的状況が理解してもらえず助けが得られないという事態を経験しました。
1型糖尿病患者さんはインスリン製剤が必要不可欠です。1型糖尿病ではインスリンを分泌するすい臓のβ細胞が壊れているため、生命維持に必要なインスリンを体内でつくることができません。ですから、インスリン療法といって、体外から注射でインスリンを補給する治療が欠かせません。注射は食事の前や血糖値が上がったときなど、1日数回自分で行います。
もし、必要なときにインスリン療法を行わないと、高血糖を起こします。災害時にインスリンが手に入らないとき、1型糖尿病でもっとも注意が必要なのは高血糖です。インスリン製剤によるインスリンの補給ができないと、1型糖尿病の人は血糖値が高いままになり(高血糖)、そのまま何の処置もできないと昏睡を起こして、早ければ1日で死に至る危険性があります。
しかし、ふだんの1型糖尿病患者さんは、一見すると健康そうに見えるので、その深刻さが理解されないことが多いのです。
災害時に、患者さんが遭遇する深刻な事態を知っておきましょう。
インスリン注射は、製剤と注射器、注射針がないとできません。ふだんからこれらを常備している自宅や医療機関、薬局などが被災すると、入手が非常に難しくなります。また、ほかの地域から入手するにしても、道路や交通手段も復旧が遅れていればやはり困難な状況にはかわりありません。
食事療法は糖尿病治療の基本です。患者さんは食事のたびに、食品に含まれるブドウ糖や、栄養素、カロリー数などを計算しインスリンを補給しています。また、空腹状態を避けるために規則正しい食生活を義務づけられている患者さんにとって、食料が手に入らない場合や、いつ、どのような食事ができるかわからない避難所での生活は、リスクの高い状況になります。
勤務先で被災し、長距離を徒歩で帰宅したり、地域ぐるみで被災支援活動を行うこともあるでしょう。しかし、1型糖尿病患者さんが長時間、激しい動作を続けると、体内のブドウ糖が不足して低血糖を起こす可能性があります。
低血糖が起きた場合、速やかな糖分補給が必要です。そのために、患者さんはスティックシュガーやブドウ糖をいつも携帯しています。でも、災害は突然やってきます。避難が先で、携帯用の砂糖類やインスリン製剤などは持ち出せない場合が多いでしょう。また、これらを買いたくても、食料品店やスーパーも被災していますし、糖分を多く含んだジュース類の自動販売機も電気の故障で動きません。生命にかかわるような低血糖時の糖分対策への問題も抱えています。
災害発生直後(約3日間)の医療機関は、重症のけが人や生命にかかわる入院患者さんの対応に追われています。今すぐに治療しないと命を失うという状況にない人、自分の足で歩ける人、意識のしっかりしている人など、一見元気そうな人は後回しになります。糖尿病の患者さんも例外ではありません。
高血糖や低血糖を起こしたときの緊急時の適切な処置を促すため、周囲の人に糖尿病患者さんがいることを知ってもらう必要があります。
また、糖尿病への理解が得られないと、「災害時なのにわがままな人」、「ぜいたくな人」と誤解され、緊急事態を招くことにもつながります。
今後も災害が起きないとはかぎりません。災害が起きたとき、患者さん本人や家族がどれだけ備えをしていても不測の事態は起こり得ます。そのとき、周囲の人々が少しでも糖尿病について知っていれば、できることがあります。
インスリン製剤を製造・販売している各製薬企業では、災害時の緊急対応を大きな課題とし、的確な情報提供と医薬品の安定供給システムの向上を日々進めています。
日ごろから、ぜひ、糖尿病のことを知って、必要とする患者さんの生活スタイルを理解してください。それが災害時の糖尿病患者さんの大きな助けとなります。